連絡を頂いたので、早速購入して読んでみる。
で、記事自体の感想はさておき、烈火の如き憤怒を覚えた
部分について触れておきたい。以下、P76より引用。
偽装請負については私も被害者であるし、正されねばならないと思う。昨年五月一日、首都圏なかまユニオンが開催した「第六回反グローバリゼーションメーデー」でジャーナリストの安田浩一氏が「偽装請負の取材現場から」という題で講演をした。
松下プラズマディスプレイの偽装請負がテーマだったが、安田氏は開口一番、半笑いを交えこう語った。
「今、チベット問題で若い右翼が中国を許すなって言ってデモをやっている。ふだん人権なんて言わないくせに何を言っているのか。だけどああいう右翼たちの背景には貧困がある」
会場にいた聴衆たちも「アハハハ右翼がねえ~」と大ウケ。
しかし、開口一番このようなことを語る必然性が何処にあるのか、理解に苦しむ。
私自身は「若い右翼」の部類に入るだろうが、チベット問題でデモをやっているのは
右翼でも何でもなく、ただ中国の非道に苦しむチベタン達を助けたいと願った
ノンポリと言うべき層が大多数なのである。
そもそも、普段人権を高らかに謳っているリベラルの側が
チベット問題に関してほとんど何もしていないのはどう言うことか。
本来なら彼らが率先して取り組むべき問題である。
会場の聴衆も笑っている場合ではなく、本来なら恥じねばならないところなのだ。
安田浩一で検索してみたところ、「外国人研修生殺人事件」なる
単行本を出しており、Amazonのレビューによれば
とあるように、労働問題に関する中国当局の姿勢にも触れている。中国当局の姿勢(人身売買まがいのビジネス、労働争議禁止)(略)の姿がリアルに暴かれていくのです。
であれば、チベット問題に対する中国政府の姿勢についても
少々想像力を働かせればわかりそうなものではないか。
しかし、彼はチベット問題に関しては、声を上げている人達を
貧困から右翼に入った人々だと嘲笑っているのである。
自らの属する立場の不作為を棚に上げて、何という言い草か!とさえ思う。
その後も右派を揶揄する内容が続いたらしい。
ここは私にとって脇道なので軽く触れるだけにしておくが、「NPOでもホームレスに生活保護申請をさせてその一部を取り上げるところがあるが、背後には民族主義の団体がある」
「西村修平(主権回復を目指す会代表)にも会ったことがあるが、彼はもともと毛沢東主義。それが今では右翼になった。働いているかどうか知らないが」
聴衆はまた「ガハハハ右翼がねえ~」と嘲笑う。
生活保護の一部を取り上げるなどは許しがたい。しかし、背後に
民族主義の団体があると言うのは如何なる確証を持って言っているのか疑問である。
また、西村修平氏についてはかつてその行動に参加したこともあったが、
彼やその運動スタイルを嫌悪する保守派・フリーチベット者も少なくなくて、
私も敢えて距離を置くようにしている以上、今となってはどうでもいい。
引き続き、P77より引用する。
筆者はこの見解を「陳腐」と評しているが、私に言わせればその評は生温く、しかし貧者=右、という見解もまた陳腐に見える。以前、私は複数の左翼活動家に「カンパで食っているんでしょ」と指摘したところ、罵声を浴びせられて否定をされたことがある。
ならばなぜ安易に右については「貧困が起因」と簡単に結論付けるのか。それ以前に彼ら貧困論者は格差と貧困を解消すべく日常、全国を回り説法をしているわけだ。それほど貧困問題に熱心な方が「右翼は貧困」と笑ってすませていいものか? 政治スタンスの違いだけで同じ貧困者であってもこの扱いだ。
「欺瞞」であるとさえ言っていい。どうも「貧困論者」はこのロジックが好きらしく、
私自身記事中にも登場する水島宏明氏の著書「ネットカフェ難民と
貧困ニッポン」で、赤木智弘氏の「希望は、戦争」と絡められた末に
(氏に直接、彼の記事は夢想レベルでしかなく、現実的にありえない。
自衛隊に友人がいる立場からも彼の主張には賛同できない、と
伝えているにもかかわらず、である)、P93において
と、まとめられてしまって、目も当てられない気分に陥ったものだ。ツトムさんの本棚を見つめていると、貧困の底にいる若者たちとナショナリズム、ファシズムにすがろうとする心情の接点が、一瞬、垣間見えた。
貧困は、政治的思想と何ら関わりはないままに降りかかってくる。
私のケースで言えば貧困から右傾化したわけではなく、もともと右派的な
立場にあった人間が貧困に陥っただけのことであるし、このような例を出さずとも
ちょっと立ち止まって冷静に考えれば判断がつきそうなものである。
また、このような言説への反証として、蟹工船ブームにも触れておきたい。
貧困から蟹工船がブームになり、入党者も増えたと日本共産党が喧伝しているが、
貧困が起因で右傾化するのならこのような現象は起きるはずがない。
むしろ、左傾化していると言うべきではないのか。
私は寡聞にして、貧困が右傾化を誘発すると言う事例もソースも知らない。
もし該当する事例やソースを御存知の方がいらっしゃれば、ぜひとも
御教示願いたいものである(なお、先述の「希望は、戦争」は
ただの夢物語でしかなく、右派的言説とは言えないと釘を刺しておく)。
人権問題にしろ貧困問題にしろ、思想の左右は本来関わりないことである。
故に、アムネスティーがチベット問題に声を上げたことは素直に賞賛するし、
その一方で右派が関わっているからと何もしないどころか、問題解決への
努力を嘲笑うような安田浩一氏の言は許し難い。
そして何より、貧困問題の解決を真摯に願う者として、
チベット問題で声を上げた人達を乱雑にカテゴライズして嘲笑う、
そんな連中が運動をリードしている限り、運動への支持を失わせて
問題解決への道のりをますます遠くしてしまう羽目に陥らせるものであると
明言しておく次第である。
2009/01/28(水) | 貧困問題 | トラックバック(1) | コメント(4)


